いまさらTENET考察マン
作成日: 2025-12-30 | 更新日: 2025-12-25
メリークリスマス。なんか人にTENETを勧めてたら(人にTENETを勧めるな)自分が観たくなってしまい、久しぶりに観てみたら、いままでなんとなくわかってなかった部分がわかってきた気がするので、いまさら考察マンです。
世にあふれるTENET考察でよく取り上げられていて大体コンセンサスが固まっているような部分はスルーで、あんまり考察で見かけない部分を中心に、トンデモ理論を駆使しつつ考えてみた次第です。言うまでもなくネタバレ全開なので注意です。
目次
- オペラハウスのテロシーン
- オスロの空港シーン
- 高速道路のアルゴリズム強奪~カーチェイスシーン
- セイターは結局どうやってアルゴリズムを手に入れたの?
- ケースの発信機はいつ取り付けた?
- セイターを盗聴しているとき、なんでスマホの画面の録音はカウントダウンしてるの?
- 主人公のSAABはなんで爆発で凍ったの?
- 逆行後のオスロの空港シーン
- スタルスク12の戦争シーン&その他
- おわりに
オペラハウスのテロシーン
なんでテロリストはガスマスクを持ってたの?特殊部隊とグルだったの?
普通に射殺しているので、グルではないと思います。ただ、ウクライナの特殊部隊がすぐに到着していますし、彼らが証拠隠滅の爆弾を仕掛けていることから、この騒ぎ全体の黒幕はウクライナ当局だと思われます。目的は主人公が言ってる通り、CIAスパイの暗殺と彼が手に入れたプルトニウム241の奪還です。
なので、政治的な誘導によって引き起こされたテロか、偽装テロを起こすよう雇われた傭兵か、この日付にこの場所でテロが起きることがあらかじめわかっていたため合わせて仕組んだ暗殺作戦か、というのが妥当な線でしょう。いずれにせよテロリストら自身は本気で戦っているのだと思います。
ガスマスクについてはおそらく普通に準備よく持っていただけだと思います。2002年に起きたモスクワ劇場占拠事件では、特殊部隊がテロリストを眠らせるために無力化ガスを劇場に流し込んでいます。作中のテロリストたちは当然この事件を知っており、対策としてガスマスクをあらかじめ用意していたということでしょう。
主人公を拷問したバンの運転手のおっさんは何者?
おそらくセイターの部下です。オペラハウスのテロの裏で暗躍していた勢力には、CIA、TENET、ウクライナ当局に加えて、「ロシア人」がいたことを船にいたCIAの上官らしき人が言及しています。拷問おじさんは当然CIAやTENETの仲間ではありませんし、ウクライナ当局の人間ならわざわざテロ作戦の邪魔になる主人公たちを手伝う理由がありません。よって彼らは上官おじさんの言う「ロシア人」の勢力の人間ということになります。そして、作中に出てくるロシア人はセイターたちだけなので、彼らはセイターの部下で間違いないでしょう。
セイターはCIAの秘密の合言葉を知っていたり、自殺用のピルを持っていたりと、CIA内部に通じている描写があります。おそらく拷問おじさんたちはCIAの現地協力者としてセイターが潜り込ませたのでしょう。そして、主人公らの作戦を手伝うと見せかけて、戻ってきたところを始末してプルトニウムを奪う計画だったと思われます。
オペラハウスでの主人公の原語セリフを読むと、「俺達の脱出ルート(拷問おじさんのバンで逃げるルート)は信用できないから別の方法で逃げろ」というようなことを指示して、ターゲットのCIAスパイに服を交換させています。主人公も薄々拷問おじさんは怪しいと感じていたのでしょう。しかし、ターゲットの顔まで割れているとは思っていなかったので、変装した仲間とともにのこのこ戻ったところ、速攻バレて拷問される羽目になりました。
オスロの空港シーン
贋作の絵を処分するために美術品保管庫に入ったのに処分してなくない?
絵の処分もする予定でしたが、保管庫中央部の怪しい部屋を調査していたら突如回転ドアから現れた黒防護服の男と格闘するはめになり、時間がなくなってしまったので諦めたのだと思います。
しかし、飛行機が保管庫に突っ込んだニュースはキャットも見ていたので、主人公は「あれはもう心配ない」と嘘をついて押し通した感じですね。任務的には一時的にでもキャットの信頼を得てセイターに近づけさえすればいいので、それで十分だったわけです。その結果、後に「あの人は絵を持ってた」とキャットに詰め寄られて「仕方がなかったんだ…」と謝るはめになります。
空港作戦後のニールとの会話意味わからんくない?
空港作戦後、主人公がニールに作戦が時間を逆行させる技術に関わることを明かしますよね。その後のやり取りがいままで全然よくわからなかったんですよ。まあ雰囲気良いんでなんとなくで流してたんですが。
ここ、たぶん翻訳ミスのせいでただでさえハイコンテクストな会話が更にわかりづらくなっているんですよね。まず、該当箇所の英語字幕と吹き替え版のセリフを並べて二人のやり取りを見てみましょう:
| ニール | The implications of this are... | つまりこの任務は… |
| 主人公 | Beyond secret. | 機密なんてもんじゃない。 |
| ニール | Then why'd you bring me in? | どうして僕を? |
| 主人公 | I thought we'd find a drawing and a couple boxes of bullets. | 絵とか銃弾を探す仕事かと思っていたが… |
| ニール | Not as surprised as I was. | いやあ、驚きだよね。 |
| 主人公 | I'm going back to Mumbai to get some answers. I'll set you up as a go-between. But remember, to you...it's all about plutonium. And when we're done, they'll kill you. | ムンバイに戻って答えを探してくる。君は仲介役だがこれだけは言っておく…狙いはプルトニウムだ。任務の後は殺される。 |
| ニール | Won't you have to do that anyway? | それ、君にだろ? |
| 主人公 | I'd rather it be my decision. | それは俺次第だ。 |
| ニール | So would I. I think. | だったら、仕方ない。 |
| 主人公 | (くすっと笑う) | |
ここ、なんか、わかったようなわからないような気がしません?まず、「狙いはプルトニウムだ。任務の後は殺される」って理不尽すぎない?と感じますし、「だったら、仕方ない」というのも急に重すぎて主人公が笑うような軽口になってないですよね。
これはですね、"And when we're done, they'll kill you."の部分が英語字幕からして間違っているせいです。脚本では"And"ではなく"Or"なんですよね。いや、ジョン・デヴィッド・ワシントンが全然口を動かさずに喋るんですっごい微妙なんですが、脚本に従って"Or"だとすると会話全体が理解できるんですよ。「狙いはプルトニウム」といった後に"And"だと「それに」というニュアンスになってしまいますが、"Or"ならば「さもなくば」となりますよね。それを踏まえて二人のやり取りの後半を再解釈するなら以下のようになると思います:
| 主人公 | I'll set you up as a go-between. But remember, to you...it's all about plutonium. Or when we're done, they'll kill you. | 君は仲介役ってことにしておく。だがいいか、君にとってはこれはプルトニウムの案件だ。じゃないと任務後に殺される。 |
| ニール | Won't you have to do that anyway? | どっちにしろ俺を殺さなきゃいけないんだろ? |
| 主人公 | I'd rather it be my decision. | それは俺が決める。 |
| ニール | So would I. I think. | なら俺もそうしたい、かな。 |
| 主人公 | (くすっと笑う) | |
どうですかこれ。エモくないですか。つまりですね、時間逆行技術はあまりに機密度が高いので、狙いはあくまで「プルトニウム」という体にしておかないと消されちまうぞ、って主人公は忠告してるわけですね。それに対してニールは「そんなことしたって知ってしまった以上俺を殺さなきゃダメなんだろ?」と痛いところを突いてくるわけですが、主人公は「それは俺が決めること」とします。それにニールは"So would I"と返すわけですが、つまりこれは「じゃあ俺も自分で決めるのがいいな」という軽口なわけですね。なので主人公は「お前が自分で決めていいわけねーだろw」と思わず笑ってしまうわけです。
が、ですよ。ニールの本当の立場を知っている二周目以降の視聴者からはこれは「君が(自分の意思で)僕を殺すならかまわない」という意味としても取れて、ダブルミーニングになってるんですよね。エッモッッッ!!!いや、深読みし過ぎかもしれませんが。エッモォ……。そうなってくると照れ隠しみたいに付け足す"I think"がまたさぁ……いやあ……たまげた。
高速道路のアルゴリズム強奪~カーチェイスシーン
セイターは結局どうやってアルゴリズムを手に入れたの?
基本的に主人公の主観で描かれるのであの高速道路とフリーポートの流れでセイターが何をやってたのかよくわからなくなりますよね。
セイター目線での流れを整理すると以下のようになります:
- キャットをフリーポートに連れてきて暴行し「ウェエエェェイ!!」と叫ぶ
- 回転ドア部屋の隠れて順行側の出来事を聞く
- 主人公が「BMWだ」と吐いた後に姿を現し、回転ドアに入って逆行
- 主人公が吐いたという因果を成立させるためにキャットのお腹を撃って逆順に尋問
- キャットをフリーポートから高速道路に連れていき逆行アウディに乗せる(キャット目線だとその逆)
- BMWを探してもアルゴリズムがなかったので順行ベンツに乗って一旦その場を離れる
- ベンツに乗ったまま捨てられているオレンジケースを回収(手をかざすと弾丸が浮かび上がるシーンと同じ原理)
- ベンツでBMWと逆行アウディに追いつき、ケースを持ってアウディに乗り換え
- ケースをBMWに投げ返すが、そこにいた逆行SAABからBMWへアルゴリズムが戻っていくのを目撃し、最終的にはアルゴリズムはSAABの中にあることを把握
- 逆行SAABを小突いて横転させる
- BMWの主人公がケースとアルゴリズムを投げ渡すという因果を成立させるため、キャットに銃を突きつけて「1…2…3…」と逆カウントする
- 窓を閉めてしばらくBMWと並走
- UターンしてSAABのとこまで行き、火をつけて爆発させる
- 順行の仲間に指示して少し未来のフリーポートに停めてあるSAABからアルゴリズムを回収
主人公たちが輸送トラックからアルゴリズムを強奪した直後、無線を傍受すると逆さ言葉の意味不明な会話が聞こえるシーンがありましたよね。実はあのシーンを逆再生してみると"Go pick up the algorithm at the Freeport."と言っているらしいです。つまり、最終的なアルゴリズムの位置を把握したセイターが部下に指示していたんですね。
ケースの発信機はいつ取り付けた?
フリーポートで逆行後、主人公はニールからスマホとイヤーピースを受け取り、そのスマホの画面に表示されているケースの位置まで逆行SAABを運転して、ケースにイヤーピースを取り付けています。ではなぜケースの位置情報がイヤーピースを取り付ける前にわかったのでしょうか?
私はそもそもこのイヤーピースは盗聴用のマイクであって、位置情報の発信機ではないと思います。逆行後の主人公とニールの会話を見てみましょう:
| 主人公 | Was the transponder on the case? | オレンジのケースに発信機は? |
| ニール | We've tossed that case. | ケースは投げた。 |
| 主人公 | I'm moving backwards. It's the ball I have to follow. Give me the reader. | あのケースを起点にして動くしかない。受信機を。 |
| ニール | (ポケットからスマホとイヤーピースを出して渡す) | |
ニールの返答が意味不明すぎて翻訳者の苦心が見て取れますね。はいここ、またなんです。字幕ミスです。というかこれに関しては何度聞いても字幕は正しくてロバート・パティンソンが台詞を読み間違えたとしか思えないんですが、実はここ脚本では"We've tossed"ではなく"He'll have tossed"になってるんですよね。Heとはセイターのことでしょう。つまりここのやり取りは実際にはこんなニュアンスです:
| 主人公 | Was the transponder on the case? | ケースに発信機は付いてたか? |
| ニール | He'll have tossed that case. | 奴はもうケースを捨ててるだろう。 |
| 主人公 | I'm moving backwards. It's the ball I have to follow. Give me the reader. | 俺は過去に向かっているんだから、あのケースを追うべきだ。受信機を。 |